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山都町地域社会調査

『山都町地域社会調査』
『山都町地域社会調査 ・ 別冊―高校生地域意識調査、PTA母親調査』
熊本大学文学部地域科学科社会学研究室 地域社会問題研究会 徳野・松浦調査班
338頁、107頁 2006年

 徳野教授から贈呈をうけたこの二冊の報告書は、徳野研究室が積み上げてきた「過疎農山村調査シリーズ」の5冊目にあたり、平成18年度に実施した院生・学生の総参加による地域調査の基幹となる文献である。
 過疎農山村は最近、話題となることが多いが、その現実となると、世間には皮相的な観察が散見される。かねてから徳野教授はこの問題について、積極的な発言に努めておられるが、その研究室の総力を挙げて「地域社会は一体、どうなっているか」と正面から問う本格的な調査報告である。山都町は平成17年2月に熊本県上益城郡矢部町・清和村、阿蘇郡蘇陽町が合併して誕生した新しい自治体で、熊本市の南東にあたり、車で約一時間という都市圏内だが、同時に山林・原野72%で地形は起伏に富み、かつ人口約2万人という農山村を語るには手ごろな地域である。勿論、町役場としてはこの調査に新しく発足した合併自治体としての展望を描きたいという目的がある。
 ここを対象に旧矢部6地区、旧清和4地区、旧蘇陽3地区の成人(18歳以上80歳未満)の385人を抽出して296人の面接から有効回答をえた結果の分析である。調査分析項目は基本構造・社会移動・生活空間・中心市街地・地域観・観光文化・コミュニケーション・農業・交通・教育・高齢者からなる。「別冊」は高校生101名の進路・家族、地域・将来、休日・インターネット、通学手段・学習環境の調査、小・中学生をもつ母親109名の地域観・教育の調査からなるが、先の基幹調査を補完するものになっている。このほか研究室として中心市街地活性化、バス問題、花嫁問題、高齢者の社会的位置づけ、4集落についての小字単位の生活・集落構造などについて別個に調査分析を進めておられるが、本報告書はそれら個別課題研究の基盤となる地域社会全体像についての解明が試みられている。
 徳野教授は、本報告のまとめとして、A.住民が町人口は増えないだろうと思っているのに施策としては人口増を要求しているというズレ、B.熊本都市圏との生活上の結びつきの強さ、C.しかも他出子の四分の三はそこにすんでいること、D.車依存が進んでいること、E.農業には多様な施策と結んで独自の展開が求められることなどを総括的に指摘しておられる。評者はそのまとめに納得すると同時に、九州地方における農山村としてのそれなりに安定した暮らしの姿が印象深い。それぞれ調べれば中国中山間地域、東北農山村地域との違いはあるだろうが、九州の背骨にあたるこの地域の、底力のようなものを感じた。
(森川辰夫)
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