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「生活改良普及員」って知ってはりますか

「生活改良普及員」って知ってはりますか
 農家とともに豊かな暮らしを求めて
(京都農村生活研究会 編・発行 2009年3月31日)

会員の方から一冊贈っていただきました。元生活改良普及員であった方に、紹介文の執筆をお願いしたところ、同業者でない方の視点で紹介していただいた方がよいのでは、と言われました。タイトルから、生活改良普及員の活動を一般の人へ紹介する内容を期待したが、自分たちが行ってきた仕事の、よかったことだけが書かれている気がして、それだけでは「生活の仕事」は伝わらないのではないか。また、サブタイトルに関しても、農家の暮らしについては置き去りで、普及員として自らの心が豊かになったということしか読み取れず、農業の厳しい現実や生活の仕事がなぜ無くなったのかに触れていないように思われた、とのことのようです。
この厳しい評をうかがいながら、私は、学際的な研究においては自分の専門に近ければ近いほど評価は厳しくなる傾向がある、という丸山真男の忠告(学問の遠近法)を思い起こしていました。またフィリピンで農村生活改善関係のプロジェクトで仕事をしていたときに、2、3日調査しただけで書かれたプロジェクト中間評価を読んで、何も分かっていないと憤慨しながら、逆に自分のような当事者が何を言っても、外部の者には、成功譚は「自慢話」に、失敗談は「言い訳」にしか聞こえないかもしれないと、当事者が語る難しさを感じたことも思い出しました。
この本は京都府で生活改良普及員をしてきた当事者たちが、自分たちの仕事を振り返るとともに、その思いを次世代に伝えたいと、自ら筆をとって書いた記録です。仕事の中身をできるだけ具体的に紹介したいと、多くの方が手分けして書いています。その範囲は、時代と農家が必要とした領域、農政の用語で言えば「農産物活用」「農家経営」「農業労働・農村環境」「男女共同参画」「高齢者活動」「組織育成」「地域づくり」と多岐に及びます。実際の活動を舞台に喩えると、語られているのは個々の演目についてです。しかし、語っているのは、芝居を見て語る批評家(研究者)でもなく、役を演じた役者(農家)でもなく、演出家(普及員)が自分の作品について語っているのです。当事者ゆえの視野の狭さはあるかしれませんが、経験にもとづいた生の声として貴重です。
仕事をしていく上で、いかに多彩な知識と技術を要したかが分かります。それは、苦労と同時にやりがいのある仕事でもあったのです。この本のなかに、仕事を通して「自分も成長できた」あるいは「育ててもらった」という言葉がしばしば出てきます。農家を相手に仕事をしていく上で、普及員自らが、自分自身を高めることがいかに大切であったのか。仕事をしていく上で向上心が不可欠であり、先輩普及員たちからだけでなく、普及対象の農家の方々からも逆に多くのことを学ばなければならなかったことがわかります。つまり、人を育てる「教育」と深くかかわる仕事だった、ということです。教育者の仕事は、将来においてどういう人を育てたか、という長い目で評価されるものです。そういう意味では、生活改良普及員の本当の評価はまだなされていないのかもしれません。
(片倉和人)
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